こんにちは、くのへ@MasazaneKunoheです。
日曜日の機械紹介シリーズ。
今日は「シャワーのお湯調整(サーモスタット)」です。
先週は産業用の温水設備をイメージしてPID制御を紹介しましたが、今日はご家庭のシャワーのお湯調整(サーモスタット)について紹介します。
こんなツイート頂きました
先日こんなツイート頂きました。
ご家庭のお風呂にあるシャワーのところにある温度調整器は「サーモスタット」です。
サーモスタットは既存のイケてるWeb記事があり、どうしてもパクリに見えてしまいそうだったので記事化しませんでしたが、やっぱり記事にしてもいいんじゃないかと思い直したので記事にしました。
シャワーの温度調整器
ご家庭のシャワーの温度調整ってこの機械がやってくれます。よく見るやつですね。
これの温度を自動調整してくれる仕組みを「サーモスタット」と言います。
次の2つの図がパッと見たところとても分かりやすいと思います。
この図にある「SMAバネ」「形状記憶合金バネ」というバネがポイントです。
このバネには「形状記憶合金」の素材が使われており、温度によって伸びるんです!!
形状記憶合金の伸びにより、水とお湯の流路の隙間のバランスが変わり、良い感じに温度調整される、という仕組みです。
形状記憶合金
あぁ、、、形状記憶合金、、、なんてロマンあふれる名前なんだ。。。
私が子供のころ、「お湯をかけると形状が戻る形状記憶合金」という話題でニュースになっていたような気がします。
せっかくなので、形状記憶合金のメカニズムを解説します。
結晶構造と変形について
まず、金属材料は結晶構造に原子が配列しています。面心立方格子と体心立方格子ですね。
ものが変形する時は、この結晶構造が「ズレる」ことで変形します。
下の図をこちらからお借りしてきました。
この図の左に黒い四角がありますが、ここ上下がずれたところの模式図です。
金属の変形というのはこのようにして行われます。
ちなみに一気にズレるのではなく、したの図のようにちょっとずつズレるように変形します(このズレのことを「転移」と言います)
このようにずれて変形してしまうと元に戻りません。これを「塑性変形」と言います。
形状記憶合金は熱でもとに戻りますが、実は「塑性変形」していないんです。
形状記憶合金はマルテンサイト変態している
形状記憶合金は最初に記載した「面心立方格子」でも「体心立方格子」でもない「マルテンサイト格子」になっています。
このマルテンサイト、、、大学で材料を学んだ私もまだ良く分からない謎の結晶構造です。
まず、次の図のように、面心立法格子の結晶があるとします(赤い部分)。
こいつを見方をかえると、ちょっと細長くなった体心立法格子のようなものが見えます。
この細くなった体心立法格子がマルテンサイト格子です。(マジ分からんw)
もともと面心立法格子だったものが、ひずんだ体心立法格子になることをマルテンサイト変態と言います。原子の位置は変わらずに、格子の長さがわずかに組み変わるので、イメージはこんな感じになります。↓これ
形状記憶合金はマルテンサイト変態が深くかかわっています。
温度を上げ下げすると、面心立法格子⇔マルテンサイト格子の組み変わりが起きるのです。
形状記憶合金を変形させ、高温にしてみよう
形状記憶合金を変形させてみましょう。
えいっ!!
はい。ちょっと斜めに変形しましたね。
結晶格子のつながりが変わっていないところがミソです。
ではこの斜めの状態で高温にしてみましょう。
マルテンサイト格子が面心立法格子状態に戻りました。
では、また温度を下げてみましょう。
あ、、、、
元の形に戻りましたwww
無限ループだこれw
そう、このような動きにより、元の状態にもどります。これが形状記憶合金の仕組みになります。
サーモスタットのバネに形状記憶合金が使われてます
最初の図に戻ってみると、このばねに形状記憶合金が使われています。
温度によってマルテンサイト変態したものが面心立法格子に戻ろうとして伸びるんですね~
中学・高校で結晶格子について勉強したと思いますが、こんなところに応用されてるんですね~
以上。
今日はシャワーのお湯調整(サーモスタット)でした~
ほとんど形状記憶合金とマルテンサイトの話でしたね
ではまた来週~
🦅バサバサ~